PAPAの独り言

PAPA(3児の父)が、いろいろ書きたいこと書きます。

『社会の真実の見つけかた(堤未果)』を読んで

社会の真実の見つけかた (岩波ジュニア新書)

ジャーナリストの堤未果さんの『社会の真実の見つけかた (岩波ジュニア新書)』を読んだので、例のごとく備忘録を兼ねて心に残ったことや、勉強になったことなどを書きます。ここで書いているのは私が本を読みながら考えたことであり、堤さんの考えではありませんので、ご注意ください。

メディアは嘘をつく(又は間違った情報を発信する)

まず一つ目ですが、「メディアは嘘をつく(間違った情報を発信する)」ということです。これは、多くの方がメディア批判として言っていることですが、テレビや新聞、雑誌、もちろんネット情報も含めて、全てのメディアは常に真実だとは限りません。

それどころか、あえて意図的に嘘の情報や誇張や脚色を混ぜて、人に真実が分からないようにさせている情報もある、という説も多々あります。

反対意見(カウンターインフォメーション)を調べる

誰の意見も「絶対的に正しい」と言える証拠が無いのであれば、私達はどうやって正しい情報にたどり着けばいいのでしょうか?

実は、その方法はない、と私は思っています。事件の当事者でもないかぎり、事件の真相は分かりませんし、科学的知識であれば、実験を実際に目の前で行った研究者にしか、真実は分かりません。

正しい情報にたどり着く方法はありませんが、「自分が納得がいく情報」にたどり着くことは出来ます。そのためのとても大切で、とても簡単なことが、「反対意見を調べる」ことです。どのような知識や情報にも、必ずその情報と反対の情報や意見が存在します。例えば、「フッ素は虫歯予防に良い」という意見があれば、「フッ素は虫歯予防にはならない(それどころか人体に悪影響)」という反対意見が存在します。

少数意見でも無名の人の意見でも情報は情報

「反対意見を調べる」時に非常に大切なことなのですが、少数意見や肩書きの無い無名の方の意見でも関係なくきちんと意見を考慮することです。

人はどうしてもメジャー(大多数の人が信じる常識)な情報を信じやすいですし、肩書きのある有名な人(テレビに出ている医者や学者、ノーベル賞科学者など)の意見を信じやすいです。

ですが、「その情報が正しいかどうか」と「肩書き」や「たくさんの人が支持しているかどうか」は全く無関係です。重要なのは、その「情報の論理に筋が通っているかどうか」や、その「情報発信者が(自分にとって)信頼できそうな人かどうか」です。

自分に不利益があることを言っている人を信じてみる

これは僕の凄く個人的な意見ですが、「自分に不利益があること(損すること)を言っている人」の意見は真実味があると思っています。例えば、世の中には「薬を使うのは良くないから」と言って、あまり薬を出さなかったり手術などの処置も最低限だけを行うお医者さんが存在します。ですが、そのお医者さんその結果、明らかに病院の収入が減ってしまいます。何のために自分が損してまで、「薬を使うのは良くないから」という信念を通すのでしょうか?

僕は、自分が損してまで信念を貫こうとする方の意見を非常に大切にしています。なぜなら、自分が損してまで他人に嘘をついたり、わざと間違った情報を発信するような人間は基本的にいないからです。逆に、自分が得するために嘘をついたり、間違った情報を発信する人は山ほどいるはずです。

貧困(お金)が全ての根本原因?

アメリカは一部の富裕層(お金持ち)を除くと、ほとんどが「ワーキングプア」と呼ばれる経済的に苦しい貧困層という二極化が進んでいるそうです。そして、お金が無いから、教育費も医療費も支払えず、まともな生活が出来ない人が非常に多くなっているのです。

教育費が無い、ということは、子供たちには選択肢が無い、ということです。選択肢がないため、「きちんとした給料が貰えるから」という理由で軍隊に入り、戦争での壮絶な体験による後遺症で、国に帰ってきた後は治療の毎日で、仕事どころではなくなっている人がたくさんいるそうです。

そして、医療費が無い、ということは、病気になっても病院に行って治療することもできませんし、虫歯になっても歯医者で見てもらうことも出来ません。アメリカは日本と違い、国民皆保険制度などありません。障害者や高齢者など、一部の人間を除いて、有料の民間保険に加入するしかないのです。しかも、この民間保険に入ったとしても、実際に病気や事故になった時に、きちんと保険金が支払われないケースが多いのだとか。本を読んで驚いたのですが、アメリカでは自己破産の最大の原因は「医療費が支払えない」ことなのです。

アメリカ国民にお金が無いのは軍事費が多いから

アメリカでワーキングプアが多くなった、大きな理由として、莫大な軍事費があります。アメリカは世界一の軍事国家ですから、軍事費も当然のことながら世界一位だと思います。軍事費が多いということは、公的医療サービスや公的教育サービスなど、本当に国民にとって必要なサービスに使うお金が少ないということです。もちろん、貧困者層に対する資金援助や、就職支援などのサービスも少ないはずです。

教育の質はお金で決まる

これは極論と思うかもしれませんが、「教育の質はお金で決まる」という一面は否定できないと思います。例えば、お金を一切使わずに学校を運営できるでしょうか? 全ての人員をボランティアで運営できるでしょうか? 答えは誰がどう考えてもNOです。

つまり、教育をするには「お金がかかる」ということなんです。これは、凄く当たり前のことですが、非常に大切なことだと思います。アメリカでは大多数の学校が財政難です。その結果、教師は非常に安い賃金で、労働時間は増えるばかりになっています。お金があれば、教師の数を増やして仕事を分担すればよいだけですが、そんな余裕はどこの学校にもありません。

軍事費が膨大な一方で、教育への予算がどんどん削られていくアメリカでは、現場で働く教師に負担が重くのしかかっていて、うつ病などで退職する人が非常に多いそうです。

大学生は借金地獄にハマってゆく

アメリカの大学生は学費は自分がローンを借りて払い、卒業後に自分が働いて返す、というのが当たり前なのだそうです。ですが、大学の学費は年々値上がりしていっていますし、このローンの利率も凄く高いので、卒業後に借金返済が凄く大変なのです。また、運よく就職できた学生はまだマシなのですが、就職難でなかなか正規の雇用につけない学生も多く、その場合は借金を返すことすらままならないのが現状です。

日本でも、最近は大学の学費が少しずつ値上がりしてきているそうです。元々日本の大学の学費は、世界でも相当高いと言われていて、僕が以前「幸せな国ランキング」というのを様々な統計データを使って調べた時にも、「日本の一番の弱点は大学の学費かも。。」と思ったくらいです。そして、日本の大学生も奨学金を借りて、卒業後の返済が大変になる人が多くなっているみたいです。

社会は変えれる(諦めず行動し続ければ)

そして、これがこの本の一番重要なメッセージだと思いますが、「社会は変えれる(諦めず行動し続ければ)」ということです。

バージニア州アメリカの他のどの州よりも、高等教育機関が充実していて、大学の進学率も高く、博士号を持つ科学者やエンジニアの数もナンバーワンなのですが、その原因となったのは、バージニア21という若者による若者のための団体なのだそうです。

皆で繋がり「数の力」で政治家を動かす

バージニア21では、「環境問題」や「平和運動」など若者にとって直接関係の無い問題テーマではなく、「就職難」や「借金」など、金銭的な切実な目の前の身近な問題を、皆で一緒に解決するための団体です。問題が切実で身近なので、非常に多くの仲間が集まっています。そして、切実(自分のこと)なので、簡単に諦めたりやめることはありません。そして、多くの仲間がいるので、政治家はその声を無視することが出来ません。1人の声は届かなくても、10万人の声は政治家に届くのです。

政治家を動かす=法律を作ってもらう

「政治家を動かす」と書きましたが、政治家の重要な仕事は「法律を作る」ことです。ですので、学生や若者の問題を解決できるような法律を提案したり、そのような法律ができるように動いてくれる政治家に声を届けることが重要です。

政治家とWINWINの関係で協力し合う

バージニア21では、政治家に対して怒りの声を感情任せにぶつけるような行動はしなかったそうです。むしろ冷静な態度で「若者に税金を使って投資すれば、大卒で優秀な人間が増えて、税収が増えますよ」と紳士的に説得したそうです。

当たり前のことですが、政治家も特別な人間ではなく、同じ人間です。一方的に「お前が悪い」とか批判的な態度を取ったり、非難する言葉を浴びせるだけでは、動いてくれるわけがありません。その辺は、日本人の私達も学ぶべきところがあると思います。ただ、行動すればよいのではなく、結果を得るための行動をしなければならないと思います。

まとめ

最後に復習的に大切なことを箇条書きしておきます。

  • 反対意見を聞く(情報を鵜呑みにせず自分で考える)
  • 全ての社会問題の背景に貧困(お金)がある
  • 社会(政治や企業)を変えるには「数の力(仲間を増やす・繋がる)」しかない

この三つの全てに関わる重要なテクノロジーはインターネットの力だと思います。

「反対意見を調べる」ことは、今はインターネットで簡単に出来ます。

「お金の問題」の一部もインターネットで解決できることがあります。例えば、有名なのはカーンアカデミーです。義務教育レベルの教育から高等教育までを、インターネットで無料で受講できる時代になっています。今書いているブログも無料のサービスです。

「数の力(仲間を増やす)」のはインターネットが最も早く簡単です。

もちろん、インターネットにも良い面と悪い面がありますし、「お金の問題」はあくまでもごく一部が解決するだけです。ですが、活用できるものは最大限活用するべきです。

それともうひとつ。アメリカの若者のおかれた悲惨な状況を知ると、「日本に生まれて良かった」と非常に思います。日本にも様々な問題があると思いますが、医療費は安いし、歯医者も簡単に行ける。大学の学費こそ凄く高いですが、高校教育までは基本無料でいけます。また、治安も凄く良い国です。海外の情報を知ることで、日本の良さをも知ることができるので、一石二鳥だなと思いました。

『社会の真実の見つけかた』は岩波ジュニア新書という、児童向けの新書ですが、書いてある内容は大人の方がよく分かるし、ためになるのでは、と思いました。ぜひ皆さんも読んでみてください。