PAPAの独り言

PAPA(3児の父)が、いろいろ書きたいこと書きます。

ロボット−それは人類の敵か、味方か(中嶋秀朗)

 日本ロボット学会理事の中嶋秀朗さんによる、『ロボット−それは人類の敵か、味方か』を読んだので、自分のための備忘録として、いろいろ書いてみます。自分用なので、中嶋さんの意見と自分の意見がまざっている箇所もあると思います。中嶋さんは大学院でロボットについて学び、現在も大学で移動ロボットやパーソナルモビリティ(PMV:個人用の移動支援機器)などの研究開発に携わっている、ロボットの専門家です。

【ロボットとは?】

ロボットはハードウェアとソフトウェアを統合した機械であり、ロボットを扱う学問のことをロボット工学(ロボティクス)と言います。JISの工業規格での定義だと、「Pepper」のようなヒューマノイド(人間)型ロボットだけでなく、お掃除ロボットの「ルンバ」や、空中撮影ができる「ドローン」なども、全てロボットになります。

【日本は世界トップレベルのロボット大国】

日本のロボット技術は世界のトップレベルなのだそうです。日本の高度経済成長期を支えたのは日本人だけでなく、日本人が創り出した産業用ロボットの力も大きいのです。それによって、他国では簡単に真似できない、ロボットに関する様々な経験やデータが蓄積されています。

AI(人工知能)というソフトウェア開発においては、アメリカに大きく先を越されている感がありますが、AIは誰もが利用できる「オープン化」が世界の趨勢となっているので、無料で簡単にロボットに取り入れることができます。

一方で、日本の技術力はすごく高くて、ロボットのハードウェアやロボットに使われる各種部品(要素部品)の性能は、世界トップレベです。ハードウェアはAIと違い簡単にコピーできません。部品の組み合わせ方や使い方により、ロボットの性能は大きく変わります。そういった、ハードウェアに関する現場の経験に基づく知恵を持っているのは、日本の大きな強みです。

【腕だけロボット、マニピュレーター】

今も昔も日本で一番活躍しているロボットは、腕だけの産業用ロボットである「マニピュレーター」です。日本の自動車産業、エレクトロニクス産業を影で支えていたのは、こういう腕一本のロボットだったのです。

【ロボットの歴史1 始まりは腕一本から】

産業用ロボットが活躍する前も、工場では一つの作業だけを行う「単機能」の機械が使われていました。それから、プログラムを入れ替えると複数の異なる作業ができる「多機能」の機械が使われるようになり、「ロボット」と呼ばれるようになります。次に、国産マニピュレーターの生産、工場への導入が始まります。そして、1980年代に入ると、日本は産業用ロボットにおいて「販売台数世界一」「稼働台数世界一」となり、ロボット大国となりました。

マニピュレーターの使用に積極的だったのは、自動車メーカーでした。危険な作業である、スポット溶接などをロボットに行わせました。

そして、初期のマニピュレーターがPTP制御と言う「ある地点から、ある地点へのピンポイントの移動」しかできなかったのですが、マイコンマイクロコンピュータ。ロボットに内臓できる小さなコンピュータを使う)の誕生により、「アーク溶接」など「線の移動」を可能にする、CP制御で動くロボットが普及していきました。制御とはコントロールのことで、マイコンはロボットをコントロールする機械です。マイコンはその後、どんどん小型化・高性能化していきます。

それから、今度はロボットの動きを生み出す装置「アクチュエーター(モーター、油圧シリンダ、人工筋肉など)」が、油圧式から電動式に変わりました。油圧式のメリットは、サイズの割りに大きな力が出せることや、高精度で応答性の良い制御が可能なことです。ショベルカーなど建設機械は油圧式で動いています。逆に、油圧式のデメリットは油漏れなどの不具合が起こり、メンテナンスに手間がかかることです。電動式のマニピュレータに社運をかけた安川電機が1977年に、マイコン搭載の電動式マニピュレータ「MOTOMAN-L10」を出荷し始めてから、ロボットの現場では油圧式から電動式が主流に変わっていきました。

MOTOMAN-L10」は、電動式であっただけでなく、垂直多関節型ロボットでした。このロボットのメリットは、小さい割に作業範囲が広く、対象物の後ろに回り込んだり、様々な動作に対応しやすいことです。ちなみに、現在日本で出荷されているロボットの約7割が垂直多関節ロボットです。

【ロボットの歴史2 第一次ロボットブーム】

※1980年~1990年代

次に1980年代、純国産のスカラ型ロボット(水平型多関節ロボット)が工場で稼動を始めました。水平方向(前後左右)に自由に微調整ができるスカラ型ロボットは、電子部品の組み立てや電子基板の制作など、自動車産業以外の工場など、活躍の場が広がりました。

それから、減速機が軽量・小型化され、ロボット全体の軽量・小型化に結びつき、可搬重量(運べる重さ)が50kgクラスの電動ロボットが誕生しました。油圧式に比べ、力が少なかった電動式でしたが、減速機の開発とモーターの進化によって、可搬重量アップに成功したのです。

ロボットの歴史を見ると、各種の部品メーカーが競争し、進化発展していった結果、完成品であるロボット自体の進化発展につながり、ロボット普及の原動力となっていったことがわかります。

1980年~1990年にかけて、日本の産業用ロボット出荷台数はずっと右肩上がりで伸び続けました。その後、国内での出荷台数は減ったり増えたりしていますが、逆に海外への出荷台数は何倍にも伸びています

【ロボットの歴史3 第二次ロボットブーム】

※2000年~2010年初頭

1991年前半にバブルが崩壊すると、産業用ロボットも影響を大きく受けて、右肩上がりの出荷台数が減少に転じます。そして、人々の興味は当時発展しつつあった、ヒューマノイド(人型)ロボットに移っていきます。そのきっかけは、後の「ASIMO」に繋がるホンダの「P2」という二足歩行の人型ロボットでした。P2はバッテリー、ソフトウェア装置など全てが内臓された自立型(ワイヤーなどでどこにも繋がっていない)ロボットでした。この自立型ロボットが感性した背景には、様々な要素技術(モータ、減速機、バッテリー、センサー、コンピュータなど)の発展がありました。

ちなみに、世界初のヒューマノイド早稲田大学の加藤一郎教授による、「WABOTO-1」です。

また、1999年には、世界初のエンタテインメントロボットとして「AIBO(4足歩行)」がソニーから発売されました。2006年までに15万台以上が売れましたが、利益にならないということで、販売が終了しました。ソニープレイステーションは1億200万台売り上げていることを考えると、やはりそれなりの数を大量に売上げないと、ロボット事業はなりたたないのでしょう。ですが、今年2018年から新型の「aibo」が発売されているようです。

その後、富士通研究所の「HOAPシリーズ」や、ロボットクリエイター高橋智隆さんの「Robi」など、小型ヒューマノイドが発売されます。

ですが、結局、「何でも人間のようにこなす」人間のコピーのようなヒューマノイドは完成しませんでした。人々の想像や期待を超えるようなヒューマノイドは創れなかったのです。そして、2010年に入り、「何か一つのことができるロボット」の時代へ転換します。今も昔もずっと現場で活躍し続けているマニピュレーターのように、専門的な仕事を人間よりも上手にできる単機能ロボットの時代です。

【ロボットの歴史3 第3次ロボットブーム】

※2010年代~

2011年に起こった東日本大震災はロボット界にも影響を与えました。原発事故後にすぐに役立つことができるロボットが存在しなかったため、目的を明確化させた実用的な単機能ロボットに注目が集まることになったのです。原発事故後すぐに役立ったのは日本ではなくアメリカの軍事用に開発されたロボットでした。軍事用に開発されているため、非常に頑強に作られていて、災害時など厳しい環境でも動くことができたからです。日本では軍事目的の研究開発は行うことが出来ないため、このような「タフ」なロボットは作られていませんでした。ちなみに、原発事故後に投入されたロボットの開発企業にはあの「ルンバ」の製造会社irobot社がありました。irobot社は今でこそ家庭用家電の製造に力を入れていますが、元々は軍事用ロボットの開発も行う会社だったのです。

DARPA(米国防高等研究計画。アメリカの軍事目的の科学技術研究機関)主催の「ロボティクスチャレンジ」は、タフさを競うロボットの国際競技会でした。大会の標準機となったのは、ボストン・ダイナミクス社の人型ロボット「Atlas」です。この競技会のトライアル予選では、東京大学発のベンチャー企業「SCHAFT(シャフト)」が開発したロボットS-ONEが圧勝しました。

それから、産学連携がうまくいったケースでは、サイボーグ型ロボット「HAL」があります。HALは筑波大学発のベンチャー企業、サイバーダインから発売されました。HALは体に装着して使うロボットスーツですが、国が主導し、国際規格づくりから関与しています。そのおかげで、ISOを取得し安全性を示すことができ、更に欧州の規格であるCEマーク付与が可能になりました。CEマークが付与できるようになると、欧州全域での販売が可能になるのですが、このような国際市場を見据えた試みは小さな一企業だけでは難しいことなのです。

また、サービスロボット(掃除ロボットやコミュニケーションロボットなど)の実用化も本格的に始まりました。その代表例が「パロ」です。パロは産総研が開発したアザラシ型ロボットで、「世界一癒し効果のあるロボット」として、2002年にギネス世界記録に認定されました。2009年にはアメリカで医療機器に認定され、デンマークでは医療福祉施設で活用され、2012年にはドイツで「パロ」を使用した訪問ケアが保険適用されるなど、世界的な広がりを見せています。アニマルセラピーという動物を使った精神療法がありますが、病院に実際に動物を運び込むことは衛生上不可能なことです。本物の動物の代わりとして、パロが効果的に利用されているようです。

ソフトバンクがGoogleからロボット会社を買収】

ソフトバンクは、AIを搭載したヒューマノイド「Pepper」君で有名ですが、実は頑強なハードウェアのロボットを作ることで有名な米国のロボット会社「ボストン・ダイナミクス社」と、東京大学発のベンチャーロボット開発会社「SCHAFT(シャフト)」を共にGoogleから買収しています。シャフトのロボットもタフで安定しているのが特徴です。ハードウェアに非常に強い日米のロボット会社を買収したソフトバンクの今後のロボット戦略は、非常に興味深いですね。

【日本で産業用ロボットが普及した理由】

部品メーカーやロボットメーカーの努力が、産業用ロボット普及の原動力だったわけですが、なぜ「他国に比べて」日本はより早くロボットを進化・普及させることができたのでしょうか。実は二つの大きな理由がありました。

一つ目の理由は1973年、1979年の二度にわたるオイルショックです。オイルショックは、日本経済に大打撃を与えました。そして、企業の存続が危ぶまれる中で、「生産性を上げるためにロボットを活用しよう」という動きが出てきました。そうした切羽詰った理由が、日本の産業用ロボットの普及のひとつの理由です。

もう一つの大きな理由は、欧米では「ロボットが普及すると、自分達労働者の仕事を奪われてしまう敵」という危機感があったのに比べて、日本では終身雇用制度の影響もあってか「ロボットは重労働を助けてくれる仲間」という意識がありました。そのおかげで、社会的に産業用ロボットが受け入れられやすい環境が既に整っていた、ということなのです。つまり、ロボットに対する意識が日本と欧米では全く違う、ということです。このことは、ロボット産業に関わる日本にとって、非常に強みとなること、だと言えると思います。

【ロボットは大量に売らなければ儲からない】

先に述べたソニーのAIBOもそうでしたが、ロボットはある程度大量に売らないと儲からない産業です。ロボットはソフトウェアとハードウェアの統合製品です。ソフトウェア開発では、固定費(人件費)などが中心となり、儲けが出始める損益分岐点に達するまでの売上げ数が、一般的な製造業より多いのです。産業用ロボットでは、自動車・電子部品市場の拡大などにより、市場が自然と広がって、大量に売ることができました。個人用ロボット(AIBOやルンバなど)を売る際にも、「たくさん売るにはどうすればよいか?(市場の拡大)」という点が非常に重要になってきます。

また、ロボットは単価の高い商品です。そして、大量に売るためには「価格以上の価値」を顧客に提供する必要があります。20万円する個人用ロボットは、20万円以上の価値を人々に与えなければならないのです。irobot社の「ルンバ」は機能を少なくしたことにより、製造コストを安く抑えています。構造も単純で、使用される部品は一般的なものばかりになっています。構造がシンプルなので、エラーが少ないというメリットもあります。そして、カバーで全体が覆われているため、壊れにくくなっています。壊れにくいので、アフターサービスやサポートに使う人件費が少なくすみ、更にコストを下げることができます。

ドローンは単機能ロボットの最たるもので、映像の撮影などに幅広く使われています。ドローンにもプロ用の高価格・高機能・高アフターサービスの商品と、個人用の低価格・低機能・低アフターサービスの商品が区別して販売されています。ラジコンのヘリコプターが普及せずにドローンが普及したのは、ドローンの操縦が非常に直感的で簡単だということと、構造が簡単なため低価格で販売できたことが理由です。我が家にも、3000円くらいの低価格ドローンがありますが、確かに操作は直感的で分かりやすかったです。

 【AI(人工知能)はロボットの頭脳】

ロボットはソフトウェア(頭脳)と、ハードウェア(体)の統合機械です。AIは頭脳にあたるソフトウェアです。複雑な動きをさせるには、ソフトウェアであるAIとハードウェアの両方の発展が不可欠になっています。車の両輪のように、AIだけが発達しても、ハードウェアだけが発達しても駄目なのです。ロボットに使用するソフトウェア・ハードウェアを総合的に研究する学問をロボット工学(ロボティクス)と言います。

ロボットに使うAIのアルゴリズム(プログラムのやり方)には、下記の3種類があります。

一番目のif-thenアルゴリズムは読んで字のごとく「もし○○だったら、こうする」というような指令をロボットに与えています。単純で間違いが少なく動作が確実である、というメリットがあります。

二番目の推論・探索アルゴリズムは、移動ロボットが、ある地点からある地点まで行くのに最短距離を探すようなアルゴリズムです。

三番目の機械学習アルゴリズムでは、人間がコンピュータに「○○だったら、こうする」と全ての条件について教えるのではなく、状況に応じてコンピュータ自身が自分で学習していくようなアルゴリズムです。これは、ロボットではなくコンピュータ上のAIにおいては、素晴らしい成功を収めました。例えば、将棋や囲碁のAIは世界一のプロ棋士にAIが勝利しています。これは、コンピュータ内でAIは物理的な世界ではありえないような莫大な回数のシュミレーション(対戦)を行うことができるからです。特に、強くなった自分自身との対戦を何度も繰り返すことで、AIはどんどん強くなっていきました。

ですが、この機械学習によるシュミレーションをロボットで行っても同じような成功は起こりませんでした。なぜかというと、コンピュータ上のシュミレーションはあくまでも「コンピュータ内での出来事」であり、実際のリアルな「現実世界での試行錯誤」とは違うからです。シュミレーションでは想定できなかった出来事が実際の現実世界ではたくさん起こります。ロボットが動くこの現実世界には、気圧・気温・湿度・風向・音声・香り・重力・土地の高さ・ロボットのハード自体の経年劣化など、様々な条件がリアルタイムで変化しながら、ロボットの体(ハードウェア)に影響を与えます。その全ての影響や変化を、コンピュータ上でシュミレーションすることが難しいのです。将棋や囲碁のAIがうまくいったのは、ハードウェアが関わる物理的な現象がほとんどなかったからです。人間も、頭の中のシュミレーションだけで縄跳びや跳び箱が上達することはないですよね。ですが、頭の中や紙の上でも、将棋や数学など「体を使わないこと」であれば、上達は可能です。ロボットも体があるので、その意味では人間と共通する部分もあるのです。

コンピュータ上でのシュミレーションは役立つものですが、「どういう条件を想定してシュミレーションすれば良いか?」を知るためにも、必ずロボットを実際に動かす実験が必要なのです。実験結果を元に、更に精度の高いシュミレーションを行うことができます。

ディープラーニングでロボットの「目」が変わる】

 ディープラーニングとは、「たくさんのデータの中から、あるパターン(特徴)をコンピュータが自動で掴みとる技術」のことです。画像や音声データに潜む関連性や共通点を見つけるのが得意です。現在は、ロボットではなくコンピュータ上で完結することに活用されています。画像認識では、従来の機械学習の方法だと「ゴリラの特徴は何か」「猫の特徴は何か」というように、認識させたいものの特徴を人間が考えて、ひとつひとつプログラムに記述していく必要がありました。ですが、「ゴリラの特徴」を言葉に置き換えたり、プログラムに落としこむのは非常に難しく手間がかかることです。ディープラーニングでは、コンピュータが自動的に画像の特徴(共通点)を見つけ出します。

このディープラーニングの技術を使えば、ロボットの認識能力が高まり、今までに出来なかった様々なことができるようになる可能性があります。例えば、道や階段を認識して自在に移動し、ドアを認識して開閉し、荷物を認識して受け渡しをするロボットなどです。

【AI(人工知能)のソフトウェアは無料公開されている】

ディープラーニングを活用したAIのプログラムは無料で公開されていて、誰でも簡単に利用できます。このようなソフトウェアをオープンソースソフトウェア(OSS)、と言います。ロボットを動かすためのミドルウェアとういソフトウェアも無料で公開されています。有名なものが、ROS(Robot Operating System)とOpenRTMです。両方とも、ロボット用ソフトウェアをコンピュータ上で動かすためのOSです。Windows上で様々なソフトウェアが動くのと同じように、ROS上でロボット用ソフトウェアを動かすことができます。

OpenRTMは産総研が世界に先駆けて開発した、ロボットの国産OSですが、ROSの方が世界的に普及しています。その理由の一つは、ROSはソースコード公開の仕組みが整っていて、早くから数多くのアプリケーションソフトウェアが公開されていたことです。もう一つの理由は、ROS陣営がOSの普及活動に積極的であったことです。

【日本はロボットのハードウェアのデータ蓄積で世界一】

繰り返しになりますが、AIは無料で公開されていて、利用するのは比較的簡単です。ハードウェアも部品自体は輸入すれば利用できるのですが、部品を組み合わせて高性能のロボットを製造するのが難しいのです。高性能なロボットを作るには、熟練した経験や知識が必須であり、その点において日本は世界一なのです。つまり、日本はロボットのハードウェアに関するビッグデータを世界一大量に持っている国、ということです。

実際に中国では、日本からロボットの部品を輸入し、日本の産業用ロボットを参考にして製造を行っています。ですが、完成品のロボットの性能は日本のものと比べて70%程度になります。各部品を知り尽くした職人がいないため、部品の機能を最大限活かす設計や、チューニングが出来ないのが理由のようです。日本では要素部品を自国で製造しているため、その特性を十分に把握した職人がたくさんいるのです。

【AIロボットは現実世界の大量のデータを必要とする】

ディープラーニングなど、最新の技術を応用したAIは、大量のデータ(ビッグデータ)を必要とします。そしてロボットにAIを活用するとなると、ハードウェアに関する大量の実験データが必要になるのです。この種類のデータを大量に持つ日本は、ロボット製造においては、他国に対して大きなアドバンテージを持っています。

AI(ソフトウェア)は頭脳です。この分野に関してはGoogleなどアメリカの企業が巨額の投資をして、研究開発を進めています。コンピュータ上で完結する画像認識や音声認識などのソフトウェアに関しては、日本はアメリカなどの企業に遅れをとっている感が否めません。ですが、ロボットや自動運転車など、ハードウェアが関わる分野であれば、むしろ日本が得意とする分野です。

【日本企業はアナログとデジタルの融合が得意】

日本企業は、アナログ技術とデジタル技術を組み合わせることが得意です。デジカメはその一例で、デジカメの世界シェアは非常に高く、一眼レフに限るとほぼ100%のシェアになっています。光学系(アナログ技術)とデジタル技術を高度の組み合わる技術を日本企業が持っているからです。

【脳から直接機械に指令を出すBMIとBCI】

前述したロボットスーツ「HAL」では、体内を流れる生体電位信号をキャッチして動いていました。それと似たような感じですが、脳から出る情報を直接キャッチしてロボットや機械を動かす装置をBMI(ブレインマシンインターフェース)もしくはBCI(ブレインコンピュータインターフェース)と言います。BMIは脳内にデバイスを埋め込む侵襲型で、BCIは脳の外側に電極付きの帽子みたいなものをかぶる非侵襲型です。こういった研究開発も国内外で進められています。

少子高齢化社会においてロボットは役に立つ仲間】

少子高齢化社会が進む日本において、これからは人材不足(労働力不足)が深刻になってきます。私達日本人が重労働に苦しみたくなければ、少子化を改善するか、一人ひとりの生産性を劇的に向上させるしかありません。生産性を上げる一つの有望な方法として、ロボットの活用という選択肢があるのです。

「ロボットが人間の仕事を奪う」ほど、現段階のロボットは万能ではありません。ある特定の機能においてのみ、人間を凌駕しているだけです。今も毎日稼働している産業用ロボットのことを、私達日本人は普段目にしないので、意識することがありません。ですが、日本の経済を影でずっと支えてくれている仲間なのです。

AI自体は純粋なソフトウェアなので、その進化スピードは予想をはるかに超える可能性があります。ですので、コンピュータ上だけで完結できる分野(プログラム作成、数学、金融関係、事務仕事や経理など)においては、確かにAIは脅威かもしれません。ですが、世の中にあるほとんどの仕事は、コンピュータ上だけでは完結しない方が多いと思います。

長期的に考えれば確かにAIを搭載したロボットが世界の主役になっていく可能性もありますが、それは今のところ「ずっと先のこと」で、僕らが想像するよりも「ゆっくり」進展していくのかもしれません。

【まとめと感想のようなもの】

とにかく、日本はハードウェアに非常に強い国だということが、よくわかりました。そして、日本にしか無いタイプのビッグデータを集めて活用していくことが、非常に大切だと思いました。今後、どのような面白いロボットが誕生していくのか、本当に楽しみです。

勉強になる点が多すぎて、凄い長文になってしまいました。ブログに書ききれなかった情報の中にも、役立つ面白い情報があるので、ぜひ興味のある方は書籍を読んでみてください。ロボットの過去と現在を知るのに、おすすめの一冊です。

ロボット--それは人類の敵か、味方か――日本復活のカギを握る、ロボティクスのすべて
 

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