PAPAの独り言

PAPA(3児の父)が、いろいろ書きたいこと書きます。

魔法の世紀(落合陽一)を読んで

魔法の世紀

魔法の世紀

 

落合陽一さんの『魔法の世紀』を読みました。例によって備忘録として自分のために、感じたこと思ったことをあれこれ書いてみます。
落合さんは<現代の魔法使い>とも呼ばれる、メディアアーティストであり筑波大学助教授で研究者でもあります。

【落合陽一さんのメディアアート作品】

メディアアート」とは僕なりに解釈すると、「科学技術による芸術表現」のことです。といっても、言葉では伝わらないのでYoutubeにアップロードされている、落合さんのメディアアート作品「Fary Lights in Femtoseconds」を観てみましょう。


Fairy Lights in Femtoseconds: Tangible Holographic Plasma (SIGGRAPH)

これ、CG(コンピュータグラフィックス)ではありません。プラズマをコンピュータのプログラムで制御し、物凄く短い時間(フェムト秒)だけ断続的に発生させて、空中に妖精のような映像を創り出しているそうです。プラズマは本来は触ると危険なものですが、フェムト秒という一瞬であればその「触り心地(触感)」を楽しむことができ、落合さんは「光は観るだけでなく、触れる」ということを本の中で言っています。


Pixie Dust Three-Dimensional Mid-Air Acoustic Manipulation [Acoustic Levitation] (2014-)

 こちらは、音波を交差させて、ピンポイントで物質をコントロールする技術を使い、空中で3次元的に表現されたメディアアートです。今までコンピュータを使ったアートとしてCGやホログラム、ヴァーチャルリアリティなどを使ったものがありますが、全て「音と光(聴覚と視覚)」を主に扱ったものになります。ですが、この作品では先ほど紹介した「Fairy Lights in Femtoseconds」と同じように、「手で触れるモノ」をコンピュータプログラムにより制御しているところに、今までの表現と違う点があります。

【『アバタージェームズ・キャメロンとディズニー】

落合さんは本のコラムでジェームズ・キャメロン監督とディズニーを高く評価しています。その理由は「感動を与えるコンテンツを創っている」からです。「中途半端なテクノロジーよりもコンテンツ(内容)が大切」と言っています。様々な企業がテクノロジーを進化させていきますが、テクノロジーが人に幸福を与えるわけではありません。

「テクノロジーをどう使うか?」という応用的実践が人に幸福を与えるからです。その意味で、ジェームズ・キャメロン監督はCGを使い『タイタニック』『アバター』などの壮大な映画を通じて、多くの人々に感動やエキサイティングな楽しみを与えています。また、ディズニーも、レーザー光(デジタルな光)と花火(アナログな光)を併用したショーを行い、人々に今までにない感動を人々に与え続けています。

ちなみに、莫大な資金を投入しCGを研究・発展させたのは、ハリウッド自身なのだそうです。また、ディズニーもコンピュータサイエンスやCGの技術に対して資金を投入し、研究しています。「技術のための技術」ではなく、「人に感動を与えるための技術開発」を真剣に行っているということです。

※2017年12月14日にディズニーは21世紀フォックスのエンターテインメント部門を7兆4000億円で買収し、あの『スター・ウォーズ』の全ての権利を取得しています

つまり、テクノロジーが不要、なのではなく良い意味での分業が大切だということだと思います。素晴らしいコンテンツを創るクリエイター(キャメロンなど)がいて、そのコンテンツを支えるテクノロジーを研究開発する学者や企業がいて、相互に協力してより良い作品やサービスを創り上げていくのでしょう。

【映像から音声を復元するMITの研究】


The Visual Microphone: Passive Recovery of Sound from Video

英語の映像なのですが、これはMIT(マサチューセッツ工科大学)による「映像から音声を復元する」という研究です。20000Hzの時間解像度のビデオカメラで部屋を撮影すると、その部屋の紙や植物の葉っぱの微妙な振動を検知することによって、部屋に流れているBGMの音声を復元できる、というのです。

音は振動です。そして映像(光)も振動です。振動を分析すれば、別の振動に変換できる。これは、考えてみれば理論的には当たり前のことなのかもしれません。理論的には可能なことが、技術の進歩によって(高解像度のビデオカメラの出現によって)、現実的に可能になった、ということなんでしょう。

ちなみに、一般的に使われるビデオカメラは60Hzなので、研究で使われる高解像度カメラは333倍の解像度を持っていることになります。

もしかすると、超高性能な音声録音の装置が開発されれば、逆に「部屋で流れる音楽や音から映像を復元する」ということも可能になるかもしれませんね。

「全ての存在は振動である」という話を聞いたことがあります。音・電磁波(光や電気など)、物質・生命、世界に存在する全てが振動している。もしそうだとすれば、その振動をキャッチし、自由自在にコントロールする技術さえあれば、どんなことも可能になるのかもしれません。

【デジタルネイチャーという概念】

落合さんは、現代の世界では「人間とコンピュータ」「デジタルとアナログ」「リアルとバーチャル(現実と虚構)」が入り混じり、その区別が曖昧になり一体化していっている、みたいなことを言っているようです。そして、それを「デジタルネイチャー」という新しい言葉を創ることによって表しています。例えば、3Dプリンタにより様々な物を作れる時代ですが、完成物自体はアナログなもので、それを創る3Dプリンタにはデジタルな技術や知識が盛り込まれている、というようなことです。

【まとめと感想】

正直なところ、全般的に専門用語が多かったので、理解できないところが多く、文脈から推測して読んだ箇所が多かったです。ですので、ブログ記事内に勘違い・間違いなどありましたら、ご容赦ください。

ブログの冒頭で紹介した「「Fary Lights in Femtoseconds」と「Pixie Dust」には本当に感動しワクワクしました。最新の科学技術を応用すると、3次元空間を自在にコントロールできてしまう。映画『マトリックス』など、コンピュータグラフィックスに慣れきっている現代人にとって、パソコンや映画のスクリーンの画面にどんな突拍子も無い映像が現れたとしても、驚くことはできません。ですが、現実の物理空間に面白い映像を表現したり、物質をコントロールするような現象を起こすと、非常に強い感動を与えます。<現代の魔法使い>は、デジタル空間(映画など)ではなく、この現実のアナログ空間に魔法を持ってきてくれた、ということなのでしょう。本のタイトル通り、正に<魔法の世紀>に突入しているのかもしれませんね。

他にも著書を出しているようなので、今後いろいろ読んでみたいと思います。そして、僕がもう少し人工知能や最先端の科学技術に詳しくなったら、今よりもっと落合さんの書いてあることがよく分かるようになるかもしれません。また読んだら、ブログにも感想を書くつもりです。